Bambu Lab X1が3Dプリンター市場を破壊した話 — 2022年以降の地殻変動

2022年4月、Kickstarterに一つのプロジェクトが登場した。目標額100万ドル。最終調達額は2200万ドル超。3Dプリンター史上最大のクラウドファンディングだった。それがBambu Lab X1だ。

何が衝撃的だったか

当時のFDMプリンターの「速い」基準は60〜100mm/sだった。X1の公称速度は500mm/s。5倍以上だ。

だがそれより重要だったのは、速度を出しながら印刷品質を維持したことだ。速さと品質はトレードオフという常識が崩れた瞬間だった。

AMSも衝撃的だった。自動マルチカラーシステム——最大4色(拡張で16色)を自動切り替えで印刷できる。AMSの登場まで、マルチカラーは上級者が複雑なセットアップをしてようやく実現するものだった。

業界の反応

Prusa Researchのジョセフ・プルサはXL(大型マルチカラー機)の開発を急いでいたが、発売が遅れた。完全な優位を取られたまま後追いになった。

Ultimakerは同時期にMakerBotと統合し、混乱のさなかにいた。Bambu Labに対応する余裕がなかった。

CrealityはK1とK1 Maxで高速プリンターに追随し、Bambu対抗機を出した。ただしソフトウェア完成度では差があった。

OrcaSlicerというもう一つの遺産

Bambu Studioはオープンソースだったが、独自機能は閉じた形で提供された。これに対し、コミュニティはBambu StudioをフォークしてOrcaSlicerを作った。

現在OrcaSlicerはBambu以外のプリンターにも対応し、事実上の「最良のスライサー」として多くのユーザーに使われている。Bambu Labが意図せずスライサーの標準を塗り替えた。

「速ければいいのか?」という問い

Bambu X1の登場後、コミュニティでは「速度競争に意味はあるのか」という議論が起きた。500mm/sで印刷できる作品なのか、実際の制約は速度よりモデルの複雑さや素材にあるのではないか、と。

答えは「速度だけではない」だ。ただ、Bambu Labが証明したのは速度と品質は両立できるという事実だ。その証明がなければ、今の市場の競争は起きていなかった。

2024年の景色

A1、P1S、X1C、X1E——Bambu Labのラインナップは拡大し続けている。2024年時点でBambu Labは世界の家庭用3DPシェアで急速に存在感を高めている。

ただし、Prusa MK4、Bambu対抗のCreality K2 Plus(マルチマテリアル)、Voron自作勢など、選択肢は多様化している。Bambu一強という状況ではなくなってきた。それはBambu Labが市場を活性化させた結果でもある。